雲の上のデザイン ― 快適な機内を追い求めて100年

翼の中の展望席から、雲の上のプライベートスイートへ。この100年間、ルフトハンザの客室デザインは幾度となく革新を遂げてきました。かつてごく少数の人に限られていた空の旅は、快適さとテクノロジーとサービスが絶妙に調和するシンフォニーとして、今や世界中の何百万人ものお客様に開かれています。ですが、時代がどれほど変化しても、変わらないものが1つあります。それは、飛行機でより速く移動できるだけでなく、ますます快適でお客様一人ひとりに合った旅をお楽しみいただきたいという、私たちの願いです。

壮麗なサロン ― 快適な機内の幕開け

1920年代から1930年代、飛行機での旅は特別な出来事と思われており、客室に足を踏み入れた瞬間にそのことが感じられました。4発エンジンのユンカースG38は空飛ぶサロンへと形を変え、お客様はバーやラウンジで機内でのひとときを楽しむことができました。座席はわずか11席で、その一部は2階建ての胴体内に配置されていました。主翼の中に配置された座席は前方の景色が一望できることで特に魅力があり、選ばれた少数の方々が特別な旅行体験を味わえるものでした。

合わせて、新たな水準のサービスが広まっていきました。1928年、男性客室乗務員であるキャビンスチュワード(当時は「ルフトボーイ」とも呼ばれていました)が初めて客室に常駐し、お客様の座席まで直接お食事やお飲み物をお持ちするといったサービスを行うようになりました。ルフト・ハンザの主要路線に投入された新鋭機ユンカースG31は、新たなレベルの快適な設備を取り入れていました。革張りの座席や電灯を備え、防音性が向上した密閉型客室には、化粧室も設けられました。こうした利点で、お客様はかつてないほどの快適な旅を楽しむことができました。そのような設備が一般的になるのは、かなり時代を下ってからです。

エレガンスで居心地のよい空間と贅沢なセネターサービス

内装デザインは、戦後期の特徴を明確に表していました。温かみのある、サロンのような雰囲気。クラシックな邸宅やクラブの内装を彷彿とさせるものでした。それとともに、生まれたばかりのルフトハンザのコーポレートアイデンティティの色やシンボル(青と黄色、鶴のマーク、特徴的な放物線)が、徐々に客室に取り入れられていきます。ただし、まだ一貫したコーポレートデザインとして標準化されていたわけではありません。

1958年、上位クラスでも大きな一歩が踏み出されます。ルフトハンザが、ロッキード「スーパースター」に「セネターサービス」を取り入れました。スタンダード席を86席並べるのでなく、空飛ぶサロンのような環境を作りました。移動手段というよりもクラブにいるような印象をもたらす空間です。8席のファーストクラス シート、20席のデラックスなスリーパーシート、4台のベッド。さらに革張りのパネルをあしらった個室のラウンジや、機内レストランとチーフスチュワードのサービスで、客室は特別な隠れ家へと生まれ変わりました。

ジェット時代と機能の現代化

1960年代初頭にボーイング707が就航すると、ジェット時代の感覚が客室にもたらされました。乗り心地がよりスムーズに、より静かに、より速く。さらに機内レイアウトがより明確になってきます。中央の通路を挟んで両側に3席ずつという配置が、エコノミークラスで一般的に取り入れられるようになりました。客室はより質実でハイテクな印象に。座席のカバーは、濃いアクセントの入った赤系の色合いなど、鮮やかな色で統一感のあるものが使われました。音楽プログラムや充実した機内サービスは1950年代後半から長距離用機材で提供されていましたが、707の時代になると、スピード、信頼性、効率的なサービスが空の旅の中心を占めるようになっていきます。

セネターサービスもジェット機材に受け継がれます。ファーストクラスには、カクテルや高級ドリンクなどをサービスするバーが設けられました。多くのお客様がそこで、素朴なハムサンドイッチをつまみながら、注ぎたてのビールを楽しみました。

同じ頃、グラフィックデザイナーのオトル・アイヒャーが、ウルム造形大学と共同で、統合的なコーポレートデザインを開発しました。内部空間を含めて一貫した計画を立てたのはこれが初めてです。コーポレートカラー、タイポグラフィ、サイネージ、カラーコンセプトを策定。ルフトハンザの客室の基礎が一貫性のあるデザインとともに築かれ、世界中で認識されることになりました。

「空の女王」― 雲の上の新たな空間

1970年からボーイング747が導入され、客室での体験はまったく新しいものとなります。2本の通路、数百の座席、機内映画、音楽プログラムなどで、それまでは考えられなかった空の旅が生まれました。象徴的ならせん階段をアッパーデッキへと上がると、そこはファーストクラス ラウンジ。お客様が集ってお飲み物やカードゲームを楽しめる空間です。

マクドネル・ダグラスDC-10など、ほかの大型航空機でも新たな可能性が広がります。客室はより大きく、通路はより広く、サービスエリアは明確にゾーン分けされました。空間そのものがプロダクトの特徴となり、ルフトハンザをご利用のお客様は、広々とした空間や整然としたサービス、よく行き届いた快適さをお楽しみいただくことができました。

1979年、ルフトハンザは初めて内装に独自のカラーコンセプトを定めます。青、黄、黄土色、オレンジ、茶、オリーブで、表面、シートカバー、パネルなどに体系的な色合いが施されました。目指したのは、精密な技術、信頼性、品質基準といった印象が、内装からも伝わるようにすることです。

ビジネスクラスの登場

1970年代、新しい大型航空機の到来とともに、客室だけでなく旅行者の要望にも変化がありました。豪華なファーストクラスと、座席がひしめくエコノミークラスの間に、フリークエントフライヤーのお客様のために快適なゾーンが別個に必要とされました。1979年、ルフトハンザ ビジネスクラスの誕生です。

世界を旅するビジネス旅行者が求めるものをふまえて、より広いシートピッチ、余裕のあるスペース、さらに上質のサービスをご提供するものです。このプロダクトの理念は明快で、快適にお仕事や休息をしていただき、気持ちよく到着地に降り立っていただくということでした。

プレミアムな機内 ― サービス文化と快適な客室が融合

1980年代、「プレミアム」というコンセプトがさらに顕著に表れてきます。DC-10とボーイング747のファーストクラスの客室に、快適なスリーパーシートが設けられました。体をすっぽり覆うブランケット、スリッパ、アメニティキットをご用意。心地よい眠りとパーソナルなくつろぎが長距離フライトで大いに期待されるようになったことを明確に象徴するものです。

合わせて、エンターテイメントの選択肢も増加。ステレオヘッドフォンで楽しめる機内映画、豊富な種類の新聞・雑誌、ゲームなどが揃い、機内で多様な過ごし方をしていただけるようになります。地上のセネターラウンジは、機内で通常行っているサービスの基準を空港へと広げるものでした。フライト中もその前後も、変わりなくスムーズな旅をお楽しみいただけるようにしました。

インテリアデザインも進化。1980年代末、デザイン事務所のZintzmeyer & Luxは、コーポレートカラーの新たなアプローチを提案しました。黄色が「ディスカバリーカラー」としてアクセントとなり、グレー、白、シルバーが、特別感、信頼性、品質といったテクニカルな印象を強めるものです。

新たなクラスで新たな快適さを

1990年代、客室に体系的な開発が行われました。1992年、ルフトハンザは、ボーイング747で3つの搭乗クラス(ファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラス)すべてに改良を加えました。座席を一新し、メニューの改良やビュッフェの新設を行い、機内エンターテイメントを刷新するなど、各クラスで明確な区別はありながらそれぞれが高い品質を保っていました。

エアバスA300により、ドイツ国内線・ヨーロッパ路線に初めて大型ジェット機を導入。客席はより大きく、通路はより広くなり、それまでは主に大陸間フライトに限られていたゆとりのある感覚をお楽しみいただけるようになりました。その後の数十年で、エアバスA319、A320、A321とともに、統一された客室デザインが新たに開発されました。頭上の収納棚、照明、化粧室、ギャレーの配置をあえて標準化し、エアバスの機種全体で空の旅がより一貫したものとして感じられるようになりました。

1995年、欧州内路線を運航する機材に、Keiper RECARO製の新たなレザーシートを採用。ビジネスクラスとエコノミークラスに視覚的・人間工学的な改良が加えられ、客室はより格好よく現代的な装いになりました。

1997年には長距離路線でも大きな飛躍があります。ファーストクラスのお客様がお座りになる座席は、長さ最大2メートルのベッドに変換可能に。プライバシースクリーンも設け、専用のスペースが格段に広がりました。ビジネスクラスも快適性が向上。座席がより人間工学に基づく設計となり、スペースがより広く取られ、背もたれがさらに深くリクライニングするようになります。そのため、さらにくつろいでお仕事や休息をしていただけるようになりました。それとともに、サービスはさらに個々のお客様に合わせたものとなります。ファーストクラスのアラカルトメニュー、個人用スクリーンで楽しむ機内エンターテイメント、ラウンジやお出迎えサービスの進化など、単なる座席を超えた快適な旅が追求されていることが明らかになってきます。

静かな贅沢と充実したエンターテイメント

2000年代に入ると、インテリアデザインにさらに力が入るようになります。包括的なコーポレートデザインマニュアルを用いて、建築やインテリアデザインが細部にわたって規定されます。素材やカラースキーム、布地、磁器、アメニティキットなどあらゆるものが対象となりました。2003年以降、長距離用機材に個人用スクリーンを設置し、充実したエンターテイメント機能を装備しました。カラー、模様、鶴のロゴが、ブランケット、枕、テーブルウェア、各種備品などに表れます。ルフトハンザのデザインは、客室の中で日々、目に見える形として体感できるものとなりました。

エアバスA380の就航とともに、2010年、ルフトハンザは新しいファーストクラスを導入しました。その明確な目標は、「世界一静かなファーストクラス」を作り出すことです。開放的でありながら静かな客室は、防音カーテン、特別な外部断熱材、カーペットの吸音材、加湿機能を備えています。これにより飛行機の旅で格段におくつろぎいただけるようになりました。広々とした座席は、長さ最大2.07m、幅80cmのベッドに転換可能。十分な収納スペース、個人用ワードローブ、洗面・更衣エリアを別個に備えた豪華なバスルームで、プレミアムコンセプトの完成形となりました。

ビジネスクラスとエコノミークラスも、一貫して改良が施されています。ビジネスクラスは、長さ2メートルのベッドはそのままに、機内エンターテイメントシステムがリニューアルし、追加で収納スペースが設けられます。エコノミークラスでは、人間工学に基づいた新開発の座席とスリムな背もたれにより、個人のスペースが約5cm広くなり、特に足元に余裕ができました。2012年以降、サービスと設備はすべてのクラスでさらに一新。新しいビジネスクラスシート、プレミアムエコノミークラスの導入、アメニティキットの刷新、ラウンジのアップグレード、エンターテイメントの拡充などがその例です。

お客様だけの快適さ ― エアスペースからアレグリスへ

2020年代以降、機内での重点は、快適さ、デジタル化、個性へと、大きくシフトしています。エアバスのエアスペース客室がA320neoファミリーの航空機に採用されています。頭上の収納棚が40%広くなり、人間工学に基づいた形状のサイドパネルで肩周りのスペースが広がり、ヒューマンセントリックライティング(人にやさしい照明)を採用。化粧室はより現代的で使いやすく。欧州内路線での空間感覚が大きく変革しました。

2023年以降、ルフトハンザのA320、A321航空機は、順次新しい客室に改修が進んでいます。この客室の特徴として、機内持ち込み手荷物を従来の2倍収納できる大きな頭上収納棚、各座席のUSBポート、スマートフォン・タブレットホルダー、人間工学に基づいた形状の背もたれで生まれるより広いレッグルームが備わっています。これまで長距離路線でしか得られなかったレベルの快適さを、短・中距離路線でもお届けするものです。

ユンカースG38の空飛ぶサロンから、1970年代の広々とした大型ジェット機、そして個々のお客様に合わせて調整可能なルフトハンザ アレグリスのスイートまで。この100年にわたる客室の姿は、技術の進歩のみならず、常に変わらない「約束」を物語るものです。

ルフトハンザの空の旅で、馴染みのあるサービスをお楽しみいただくとともに、快適さやデザインのレベルがそれまでとひと味違うと感じていただけるよう、常に進化を続けています。